引っ越し時に起きがちなトラブルとは?防止策を事前に考えよう!
直近4年の統計結果では、「国民生活センター」に寄せられる引っ越しにともなうトラブル相談案件は、毎日6件発生しています。ここでは、引っ越し時に起こりがちなトラブルや事前防止策、事後対処法についてご紹介します。この記事を参考によくある事例を把握し、前もって準備しておきましょう。
引っ越し時に起きがちなトラブル事例
国民生活センターに報告された相談内容で、よくあるトラブルは下記の5つです。
「荷物の破損やヨゴレ」「建物の汚損やヨゴレ」「荷物の紛失」「日時に関するトラブル」「料金に関するトラブル」。それぞれ解説していきます。
■荷物の破損やヨゴレ
これは引っ越しトラブルの中でも、最も多いトラブル事例です。
・大事な皿が割れていた。
・高級ブランド家具に傷を付けられた。
・家具に指紋や汗の跡が付いて取れない。
・家電製品が動かなくなった。
・取り付けてもらった照明器具やエアコンが落下して壊れた。
など、さまざまなケースがありますが、中には事故やケガに至るケースもあるので油断できません。これらは、引っ越し業者の梱包の仕方が充分ではないことや、荷物の取り扱いを丁寧に行っていないこと、運転が乱暴なこと、設置が充分でないこと、などの要因によって起こります。引っ越し繁忙期などはとくに1日に何件もスケジュールを詰めているケースがあり、時間との闘いになるため、こういったトラブルも多くなりがちです。
■建物の破損やヨゴレ
これも荷物の破損やヨゴレに次いで多発しているものです。
・養生が充分でなかったために、床や階段に傷が付いた。
・引っ越し業者の持って来た養生マットに、小石や泥が付着し汚れた状態だったため、引っ越し前の家や、引っ越し先の住居が汚れ、クリーニングが必要になり、清掃費用がかかった。
など、作業中の注意不足から発生するケースがほとんどです。建物の破損やヨゴレは、荷物の破損やヨゴレ以上に、修繕費用がかかることもあるため、避けたいトラブルですね。
■荷物の紛失
以下は、国民生活センターに持ち込まれた最近の相談事例です。
・海外への引っ越しを契約し、代金を支払って荷物の積み出しをしてもらったが、現地の転居先に荷物が届かない。
このようなケースは、中~長距離の引っ越しの際に、起こりがちです。これは引っ越し前の家から荷物を運び出して運搬するトラックと、引っ越し先で荷物を下ろすトラックが違う場合などに発生します。海外引っ越しのケースで説明すると、引っ越しする前の家から荷物を積んだトラックは、そのまま海を渡ることはできませんから、船か飛行機に載せ替えを行います。そして港や空港に到着すると、今度は現地のトラックに詰め替えて運送を行います。
このように、長距離の場合は、何度か荷物を詰め替えることがあるため、そのタイミングで紛失につながることがあります。また、繁忙期は1日に何件も引っ越し作業を行うことがあるので、下ろし忘れた荷物が次のお客様の荷物と混ざってしまう、というケースもあります。このように紛失リスクは決してゼロとはいえませんので、無用のトラブルを避けるためにも、事前対策をしておきたいものです。
■日時に関するトラブル
・作業員が遅れて来たために、予定時間を過ぎても荷造りが終わらなかったばかりか、残りは自分で行うようにといわれた。
・引っ越し業者が日程を間違えていて、来なかった。
・予定の時間になっても連絡がないまま、何時間も遅れてやって来た。などのように、日時に関するクレームもよくあるものです。交通渋滞や交通事故、または悪天候による遅れ、前の案件に予想以上に時間を要したなど、さまざまな理由があります。
■料金に関するトラブル
・期限内にキャンセルしたが、キャンセル料を請求された。
・契約した覚えのない追加オプションが付けられていた。
・口頭で見積額を提示され、あれよという間に段ボールや契約書類が送られて来た。その後、別の会社と契約を決めたため最初の業者を断ったところ、段ボールの代金と返送料を請求された。
など、料金に関することも、よくあるトラブルとして挙げられます。未然に防ぐことのできることができるものなので、充分に注意しておきたいですね。
引っ越し時のトラブル防止策
事前に防止できるトラブルもあるでしょう。引越し時のトラブル防止策をまとめました。
荷物の破損やヨゴレ/建物の破損やヨゴレ
荷物や建物を傷付けないようにするためには、引っ越し作業にすべて任せっ放しにしてしまうのではなく、作業経過を見守ることが大事です。梱包が不充分だと感じたり、搬出や搬入が乱暴だと感じたりした場合は、その場ですぐに要望を入れるなど、改善できることは現場で即座に対応してもらいましょう。
作業員の注意欠如や経験不足などが影響する部分ですので、不安感を抱いた時点で解消しておくことが、トラブルを未然に防ぐことにつながります。また、大事なものや壊れやすいものは、荷造り前に写真を撮っておくことも大切です。それにより、万が一の場合に「引っ越しによって破損した」ことを証明できます。
荷物の紛失
まずできることは、段ボール箱のリスト管理です。前もって段ボールに番号を付け、各段ボールに中身を記載しておくこと。内容物一覧表を作成し、個数を計算しておくこと。搬出終了時・搬入終了時には、そのリストに従ってチェックを行うことで、運び忘れやトラックからの下ろし忘れを防ぐことができます。
また、貴重品については、特別な対応をする必要があります。「標準引越運送約款」の第4条第2項各号で、運べないものが定められており、現金・有価証券・宝石貴金属・預金通帳・キャシュカード・印鑑、などの貴重品は、引っ越し業者の補償対象外となりますから、自分で運ぶようにしましょう。
日時に関するトラブル
いくつかのポイントを押さえておくことで、こちら側の落ち度や認識違いを防ぐことができ、万が一の場合に備えることができます。見積書に記載されている荷物の搬出日時・搬入日時を入念に確認し、電話で依頼した場合に発生しがちな「いった・言わない」の勘違いをなくしておきましょう。また、記載されていないことがあれば、書面に盛り込んでもらうようにしましょう。
キャンセル規定・不明点・気になる点について詳細確認しておくことや、万が一の場合にどういった対応をしてくれるのか、などを確認しておくことにより、認識の違いを未然に防いだり、遅延トラブルを想定内に入れた行動シミュレーションを用意しておけたりするので、安心です。
料金に関するトラブル
引っ越し業者を選ぶ際には、複数社から見積もりを取ることが大事です。少なくとも3社以上見積を行い、各社から提出された内容を一覧にまとめた上で、比較検討を行いましょう。一覧にまとめて全体を見ることにより、各社の微妙な違いや、不明点にも気付きやすくなります。A社ではオプションになっているものが、B社では込み込みになっているなど、細かい点に気付くことができるので、見積りを取る際に一覧表の用意は必須です。
また、引っ越し業者が「運送業者貨物賠償責任保険」に加入しているかどうかも、確認しておきましょう。万が一トラブルが起こった場合に、補償してもらえるかどうかの基準にもなります。よくあるのが、段ボールの代金や返送に関するトラブル。本契約をしていない段階で、段ボールを送りつけて来る業者もいるため、そのようなことのないよう見積時にしっかり伝えておきましょう。
引っ越し時にトラブルが起きてしまった際の対処法
こちら側がどんなに気を付けていても、実際にトラブルが起こってしまうことはあるものです。当日現場でのやり取りによっては、補償されにくくなる場合もあるので、以下のポイントを事前に知っておくことが大事です。
■荷物の破損やヨゴレ/建物の破損やヨゴレ
破損の現場を目撃した場合は、まずその場で話をすることが大事です。現場で、スタッフから営業担当者や上長に電話をかけてもらい、破損に対する保証・今後の流れ、などについて明らかにしてもらいます。引っ越し業者が去った後に気付いた場合は、できるだけ早く営業担当者やお客様相談窓口へ連絡しましょう。引っ越し前に撮影しておいた破損のない証拠写真があれば、スムーズに損害賠償請求を進めることができます。
その際は、引っ越しから3カ月以内に連絡することが肝心です。3か月以上経過すると、引っ越し業者の責任は消滅すること、そして事前写真がない場合は、時間の経過と共に、引っ越しの際に発生した破損かどうかを証明しにくくなるため、一刻も早く行動する必要があります。可能であれば、引っ越し当日に確認を行うとよいでしょう。家電製品などは、外見上は問題なくても、内部が破損している場合もあります。まずはすぐにコードをつなげ、動作確認してみましょう。
■荷物の紛失
荷物の紛失に気がついた場合、引っ越し完了の書面にサインしてはいけません。サインをすることで、「不備なく引っ越しが完了した」という内容に同意したことになります。後から伝えても補償されない場合があるため、注意が必要です。
補償については、上記「荷物の破損やヨゴレ/建物の破損やヨゴレ」と同様に3か月以内に報告という期間が設定されていますが、引っ越し後数日であれば見つかる可能性のあるものでも、数週間経つと持ち主不明扱いとなり、処分されてしまう可能性が高まるので、一刻も早い連絡が必要です。
■日時/料金に関するトラブル
契約した日時に引っ越し業者が来ないばかりか連絡も取れない、というケースは契約違反にあたります。また、時間通りに業者が来なかったことで損害が生じた場合や、それに伴い拘束時間が発生した場合などについて、損害賠償請求をできます。作業現場スタッフに伝えるのではなく、業者のお客様相談窓口へ連絡するとよいでしょう。また、補償されないケースには次のようなものがあります。
・天災、自然災害(台風・地震・津波などの自然現象)
・予想不可能な交通トラブル(事故渋滞など)
・社会情勢によるもの(戦争、ストライキなど)
・依頼者側の過失(自分で雑に荷詰めを行った)
・依頼者側の都合によるキャンセル・延期
これまでご紹介したように、引っ越し時にトラブルが起きる可能性は、決してゼロではありません。あなたも被害者になってしまわないように、事前対処できることは自分でしっかり行うことが大事です。そして、同じくらい大事なことは、信頼できる引っ越し業者を選択することです。必ず複数社の見積もりを取り、保有資格の有無・補償程度・営業担当者の対応など、ポイントとなる部分をしっかり確認した上で、信頼できる業者を選びましょう。