個人事業主が引っ越しする際は引っ越しの費用は経費扱いにできる?
個人事業主の方で、住居をオフィスのように使用されている人もいるでしょう。住居兼オフィスで、お仕事している部分の家賃は、経費に認められています。しかし、引っ越しとなった場合の経費にできるもの、できないもの、また、仕訳のやり方や引っ越す場合にかかる金額は、経費になるのか、それとも一部なのかを解説していきます。
引っ越し費用は経費計上できるのか
個人事業主が移転する場合、ケースが4つあり、経費にできる場合とできない場合があります。
住居・オフィスが別であり、オフィスだけの引っ越しの場合
住居とオフィスが区別してあり、オフィスだけを引っ越す場合です。お仕事に関する移転になるため、移転に関わる全ての代金を必要経費にできます。
住居・オフィスが同じであり、オフィスだけの引っ越しの場合
現在、住居兼オフィスとし、オフィスの部分だけの移転で、住居はそのまま住むという場合です。
オフィスの部分だけなので、お仕事に関する移転になり、上記のケースと同じく、移転に関わる全ての代金を必要経費にできます。
住居・オフィスが同じであり、住居だけの引っ越しの場合
現在、住居兼オフィスとし、住居だけを移転し、オフィスはそのまま残して利用する場合です。
生活圏の移転になり、お仕事とは関係ないため、移転の代金を経費としては認められません。
住居・オフィスが同じであり、新しい住居・オフィスへの引っ越しの場合
現在、住居兼オフィスの状態から、新しい住居兼オフィスに移転する場合です。
お仕事に使用している部分と、生活圏の部分の割合を算出します。そして、お仕事での使用部分の移転割合だけが、経費にできます。このように、同じ個人事業主でも、どの部分の移転になるかで、経費にできるかどうかは変わってきます。
引っ越しで経費にできる項目とは
基本的には、お仕事に関する移転の代金は、全て経費にできます。
下記のものは、全て経費にできますが、領収書のような正式な記録がない代金は、経費として認められません。引っ越しに関するバス代や電車の切符代は、レシートや領収が発行されないため、これらは、自分ですぐに出金伝票を作成しましょう。
税務署の調査が入った時に詳細を説明できるように、レシートや領収書は記録として残し、何にいくら使ったのか、正確にメモを残すとよいでしょう。
引っ越しの代金を経費計上する時に、礼金、敷金、火災保険料、鍵の交換代、交通費など、代金ごとに勘定する項目が違い、どのような仕訳になるのか、解説していきます。
仕訳の方法
業者に支払う荷造運賃費用などは、「福利厚生費」や「旅費交通費」になり、領収書を忘れずにもらいましょう。
運び出し、荷造り、搬入、トラックでの運搬などは、業者に依頼し、「雑費」として経費にできます。荷造りで必要な段ボールなどの梱包の箱は、「荷造運賃」になります。オフィスが移動することで、雇用している従業員の移転代も経費にできます。
礼金
移転先で礼金を支払った場合、20万円を目安に勘定する項目が変わります。
礼金の金額が20万円以下の場合、「地代家賃」として計上します。礼金が20万円以上の場合は、「長期前払費用」として、資産計上し、賃貸期間で減価償却します。
敷金
敷金は、退去する時に、手元に返ってくることが前提になっています。
戻ってくる代金に関しては、経費として認められません。ただし、敷金のうち、退去時に壁紙の修繕や畳の替えなど、敷金の中から支払いがあった場合、その金額を経費にできます。その時の勘定の項目は「修繕費」になります。
火災保険料
火災保険の支払いが必要な場合、「損害保険料」として経費にでき、ほかに代金がかかれば、代金に合わせて、勘定の項目を仕訳します。
管理費や家賃は、お仕事に関する部分を経費にできます。
仲介手数料
不動産会社を仲介して移転先を探した場合、契約が成立した時に、不動産会社への謝礼金を「仲介手数料」として支払います。
宅地建物取引業法第46条により、仲介の手数料は賃貸の場合、最高でも家賃1か月分+消費税と定められてます。そのため、物件を契約する時に、額がいくらになるか、不動産会社に確認するのをおすすめします。仲介手数料は「支払手数料」という勘定の項目で経費にできます。
鍵の交換代
軽く見がちで、また、交換するだけで数万円する場合もありますが、セキュリティを考え、気を遣いたいところなので、オフィスの鍵は交換しておきましょう。
仕事するうえで、必要経費のため、「消耗費」になります。
交通費
移転のため、内覧や足を運んだりした分の交通費は、お仕事に関わる必要な代金のため、「交通費」として、経費にできます。
見落としがちな経費とは
大型家具の処分代や名刺、会社サイトの表記の書き換え、電子機器の再設置代金など、経費にできるのに、見落としてしまう経費は意外にたくさんあります。
見落とさないようにしましょう。
本店や支店移動で発生する登記の書き換え
登記している方がオフィスを移転させる場合、法務局で移転を登記します。
移転するときは、登記の書き換えに印紙代が、本店・支店の移転数1か所につき、3万円かかります。こちらの印紙代も、経費にできます。
大型家具などの処分代
心機一転のため、家具の総入れ替えをしたときに、前の家具の処分は自治体によって、リサイクル料や処分料が請求されます。
専門業者に依頼しても同じくらい処分料がかかります。引っ越しの経費には、退去時の代金も含まれ経費にできます。大きな額になるので、領収書を忘れずにもらいましょう。
名刺や会社サイトの表記の書き換え
オフィスの住所が変わった場合、名刺の記載も変更になるので、名刺の作成代金や、ホームページの修正料金も経費になります。
電子機器や電話の再設置代金
サーバーを移転させて設置する場合は、専門知識が必要になり、大きい額になることもあります。
その時の代金も経費にできるので、忘れないようにしましょう。
認められないもの
住居兼オフィスを移転する場合、個人事業主のお仕事に必要ではない、ピアノや楽器、絵画の美術品などは認められません。
ピアノ講師などで音楽を教えるお仕事であれば、楽器などの移動代は、経費にできます。しかし、楽器類は一般的に趣味の範囲としてみなされ、個人的な移転に区分されることが多いため、経費に認められません。
同じように、絵画、骨董品の美術品、ペットなどはお仕事と関わりがない限り経費にできません。税務署に聞かれた際に、お仕事で使う目的があることをしっかり説明できるようにし、事前に確認するとよいでしょう。
まとめ
本記事では、個人事業主の方が悩む、移転の費用は経費扱いになるものについて役立つポイントについて解説しました。移転するのですから、経費に出来るものはしておきたいものです、勘定の項目もそれぞれありますので、チェックして経費になるもの、ならないものをしっかり把握しておきましょう。本記事が、引っ越しの経費になるかどうかで悩んでいる個人事業主の人のお役に立てれば幸いです。